ヘッジファンド大手ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者で著名投資家のレイ・ダリオ氏は27日、米国が自らが提唱する「ビッグサイクル」理論の第5段階の終盤にあるとの認識を示し、警鐘を鳴らした。
ダリオ氏は現状を「既存秩序の崩壊前夜」と位置付け、「現在、我々は第5段階から本格的な秩序崩壊が起きる第6段階へ移行する瀬戸際に立っている」と指摘。ミネアポリスで起きたICE(移民・関税執行局)への抗議者殺害事件は、米国がより暴力的な内戦段階に移行しつつある兆候だと危機感をあらわにした。
ダリオ氏によると第5段階では、膨大な債務が限界に達して財政危機が表面化する。それに伴う大規模な通貨発行が、既存の通貨秩序を崩壊へと加速させるという。
同氏は、これまでも繰り返し、米国を中心とした世界経済秩序の崩壊が避けられない段階に入ったとの警告を発している。通貨秩序が財政再建によって自発的に修正される可能性を「低い」と切り捨て、民主主義を支える国内外の秩序回復についても「疑わしい」と冷徹に分析している。
しかし、ダリオ氏は同時に、我々が「まだ崖の淵に踏みとどまっている」点を強調。今こそ、手遅れになる前の最後の準備期間であることを理解し、状況に適した最善の方法を見極め、制度を絶えず改革し続けることが重要だと述べた。
同氏によると、優れた制度の基準とは「多数の人々が望むものをどれだけ実現できているか」であり、客観的に測定できるものだと主張。歴史からの教訓を以下のようにまとめた。
このような状況で、個人レベルではどのような備えができるのだろうか。
法定通貨や既存金融システムへの信頼が揺らぐ中、金と銀はそれぞれ史上最高値を更新し続けている。
ダボスの世界経済フォーラムで講演したレイ・ダリオ氏は、トランプ大統領のグリーンランド支配をめぐる対立が新たなグローバル金融紛争を引き起こす可能性を警告。
「地政学的紛争時、同盟国も互いの債務を持ちたくなくなる」と指摘し、金価格の高騰を例に挙げた。「ハードマネーへの回帰は歴史的に繰り返される論理的現象」とし、金の上昇は米国基軸通貨地位喪失の警告信号だと強調した。
翻って「デジタルゴールド」と期待されているビットコイン( BTC )はどうだろうか。
ダリオ氏が推奨する「凍結に強いハード資産」や「自由に譲渡可能な資産」の条件に理論上は合致するはずのビットコインだが、現実は大きく異なる。現在、ビットコインは約88,000ドル前後で推移し、過去数カ月間、狭いレンジ相場が続いている。
B2 Venturesの創業者アーサー・アジゾフ氏は、現在のビットコインの状況について、避難先となる資産間の競争という点から説明している。
市場からは、ビットコインはデジタルゴールドとして、まだ成熟していないとの声が上がっている。ActivTradesのアナリスト、キャロレーン・デ・パルマス氏は、ビットコインは安全資産ではなく、リスク資産のように動いていると指摘し、次のように述べた。
ダリオ氏は、政府や中央銀行の介入から比較的独立しており、インフレ耐性があるハードマネーのカテゴリーにビットコインを含め、少量の保有(ポートフォリオの約1%)を認める発言もしている。しかし同時に、金と比べると依然として不利な点があると指摘し、慎重な姿勢を維持している。
また同氏は、ビットコインは全ての取引が公開されていて「透明性が高すぎる」点が、中央銀行がビットコインを準備資産として受け入れるのに不向きであると考えている。さらに、ビットコインは自己保管が可能である一方、取引にはグローバルネットワークへの依存があるため、完全な独立性を持たない点が不利といえる。
人類の歴史を通じて、セーフヘイブンとしての実績と信頼を築いてきたゴールド。対して、誕生からわずか17年のビットコイン。世界秩序が根底から揺らぐ歴史の転換点において、この新興資産が『真のデジタル・ゴールド』へと昇華できるのか。その真価が今、かつてない規模で試されようとしている。
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