暗号資産(仮想通貨)に肯定的なドナルド・トランプ氏が正式に米大統領に就任し、2025年の仮想通貨相場は米国の動向に影響を受け、上下に大きく振れた。
本記事では、激動の1年を終えるにあたり、1回目の仮想通貨バブル後の過去8年間において、仮想通貨の時価総額の順位がどのように変動してきたかを振り返る。
18年1月にはイーサリアム(ETH)やXRPなどのアルトコインバブルが発生したが、長続きはせず。
1月末には、仮想通貨取引所コインチェックから大規模な不正流出事件が発生。世界的にもICO詐欺が増加し、各国の仮想通貨規制が大幅強化された。テザー(USDT)の信用不安や中国の仮想通貨禁止令も重なった。
18年11月には、ビットコインキャッシュ(BCH)の敵対的ハードフォーク(ハッシュ戦争)が勃発。FUDの影響でビットコイン(BTC)価格は一時3,000ドル台まで急落するなど、本格的な弱気相場(ベア・マーケット)に突入していった。
表記順:通貨名(ティッカー):(前年順位→順位)
ビットコインのジェネシス・ブロック生成から10周年を迎えた2019年。6月22日には、ビットコイン価格が1年3カ月ぶりに1万ドル台に復帰した。
19年3月には、日本政府が金融商品取引法および資金決済法改正を閣議決定。仮想通貨の正式名称は、世界基準に合わせ「暗号資産」へと変更された。
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年初のビットコイン価格は7,000ドル台から始まるも、新型コロナウイルスの世界的蔓延(パンデミック)を発端としたコロナ・ショックが金融市場を襲った。
3月には3,000ドル台まで暴落。しかし、各国政府の度重なる大規模金融緩和の影響や3度目の「半減期」を経てビットコイン価格は大幅回復。ヘッジファンド界の大物ポール・チューダー・ジョーンズ氏などが、米ドルのインフレヘッジとして保有するなど論調にも変化がみられた。
また、夏頃には「DeFi(分散型金融)」がトレンドとなり、ユニスワップ(UNI)やスシスワップ(SUSHI)などの銘柄が注目を集めた。流動性マイニングやステーキング、DEX(分散型取引所)などの活動による高利回りが着目され、ユーティリティトークンやステーブルコインが一段と重要性を増した。
10月中頃にはPayPalの仮想通貨サービス開始など好材料が相次ぎ、本格的な強気相場にトレンド転換。20年12月には3年ぶりに過去最高値を塗り替え、29,000ドルまで続伸した。
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20年5月に半減期を終え、20年12月に過去最高値を3年ぶりに更新したビットコインの勢いは2021年上半期も止まらなかった。特に1〜2月の勢いは凄まじく、3万ドル、4万ドルと瞬く間に更新した。
しかし強気トレンドは永遠には続かず、デリバティブ(金融派生商品)市場の過熱感から何度も大幅調整を余儀なくされた。4月15日のコインベースのナスダック株式市場上場をピークに、5〜7月は弱気トレンド入りした。
特に大暴落となった今年5月には、マイニングの環境面への悪影響を懸念したとするテスラ社のビットコイン決済中止のほか、中国当局の仮想通貨禁止令でマイナーへの圧力を最大化。これまでビットコイン・ハッシュレートの大半を占めていた中国業者が撤退させられ、ハッシュレート(採掘速度)が激減した。
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その後も金融緩和の継続などの影響もあり、株式市場や仮想通貨市場への資金流入は続いた。ビットコイン相場も7月下旬頃より回復し、再び高値を目指していった。
9月には、中央アメリカの小国「エルサルバドル」が、ビットコインを法定通貨として位置付けるビットコイン法(Ley Bitcoin)を施行。国家としてのビットコイン運用も開始し、いずれも世界初の事例となった。
「ビットコイン先物ETF」初承認に関する思惑などから10月に4月の高値を更新すると、11月10日には過去最高値の69,000ドルを記録した。
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イーサリアムエコシステムも大きく発展を遂げた。
NFT(非代替性トークン)最大の電子市場OpenSeaでは、取引量が急増。世界的なブームで大手企業も独自NFTを発行するなど続々参入した。10月末には、米最大手のフェイスブック社が「メタ」への社名変更を発表、メタバースが一躍バスワードと化した。
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次世代チェーンへの移行に向けて進展するイーサリアムは、8月に大型アップグレード「ロンドン」を実装。ベースフィーをバーン(焼却)する仕組みが導入され、バーン数は約3ヶ月で累計100万ETHを突破した。
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上位銘柄では、USDCやバイナンスUSD、テラUSD(22位)、Dai(23位)など、ステーブルコインの台頭が見られた。
また、2013年誕生と業界では長い歴史を持つドージコイン(DOGE)や同系統のミーム犬銘柄であるシバイヌ(SHIB)トークンが急騰。21年1月に金融市場を揺るがせたゲームストップ株騒動やイーロン・マスク氏の度重なる言及を経て、投機銘柄としても注目を集めた。
イーサリアムのガス代高騰がボトルネックとなり、ポリゴン(MATIC、現POL)に関心が集まったほか、バイナンススマートチェーンの台頭でバイナンスコイン(BNB、現ビルドアンドビルド)がTOP5に浮上。カルダノ(ADA)やソラナ(SOL)、ポルカドット(DOT)、アバランチ(AVAX)など「イーサリアムキラー」と称される銘柄も頭角を現した。
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一方、時価総額上位常連だったXRPは後退。20年12月に米SEC(証券取引委員会)から有価証券問題でリップル社が提訴され、係争中であることで上値を重くした。
2022年は、米株式市場が2008年の金融危機(リーマン・ショック)以来の下げ幅となるなど、仮想通貨市場も弱気相場の続く1年となった。
2月にはロシアによるウクライナ軍事侵攻があり相場が荒れた。4月初旬には、反発が強まり48,240ドルの年初来高値を更新。しかし、その後は弱気相場が続き1年を終えた。
2022年上半期の下落は、FRB(米連邦準備制度)によるインフレ抑制のための「金融引き締め」やロシアによるウクライナ侵攻を踏まえた金融市場のリスクオフなどが影響しているが、仮想通貨市場での大きな要因がテラ(LUNA)・UST問題だった。
ステーブルコインUST(TerraUSD)のディペッグを背景に、テラの非営利組織である「Luna Foundation Guard(LFG)」が用意していた準備金のビットコインによる売り圧力が懸念された。DeFi市場で大規模な信用不安を引き起こしたことが大幅な下落に繋がった。
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6月中旬には、レンディング大手Celsius Network(セルシウス・ネットワーク)が顧客資金の出金を停止したこともあり、投資家心理の悪化に拍車がかかった。
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下半期では11月初旬、アラメダ・リサーチおよび大手取引所FTX破綻の影響で大規模な信用不安をもたらし、問題は大きく飛び火した。
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一方、イーサリアムのエコシステムでは大きな発展があった。
イーサリアム・ブロックチェーンのコンセンサス(合意形成)アルゴリズムを「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」から「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」へ移行する大型アップグレード「The Merge」が9月に実装完了した。
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Web3分野では日本でも政府が推奨し始め、法人の期末課税の税制改正に踏み込んだ。
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22年3月〜4月にローンチされた「BAYC(Bored Ape Yacht Club)」関連のApeCoin(APE)やOthersideのメタバース土地セールをピークに、PFP系のNFT市場規模はブームが翳りを見せたものの、ベンチャーキャピタルによるWeb3ゲーム業界への資金流入は続いた。
特に上半期は、歩いて稼ぐ「Move to Earn(M2E)」のSTEPNが反響を呼び、ガバナンストークンGMTが大きく値上がりする場面もあった。
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仮想通貨市場は、2022年のテラ騒動やFTXの破綻などで冬の時代に入ったまま2023年を迎えたが、年末に近づくにつれて相場は少しずつ上向き始めた。一部からは冬の時代は終わったとの声も上がった。
ビットコインは、2024年に予定される半減期や米国での現物ETF承認への期待などの要因で価格が上昇。イーサリアムは4月に大型アップグレード「Shapella(シャペラ=上海+カペラ)」を成功し、XRPは米SECとの裁判でXRP自体は有価証券ではないと裁定された。
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また、FTXやその関連企業から多くの出資を受けていたソラナのエコシステムは、FTXらの破綻で大きなダメージを受けたもののその後に復活している。
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米SECが複数の仮想通貨を有価証券であると主張し、コインベースやバイナンスらを提訴したが、2023年は明るい話題も増え始めた。
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2024年は12月にビットコインが初めて10万ドルの大台を突破するなど歴史的な1年となった。
1月に米SECが、長期にわたって認めてこなかったビットコイン現物ETFを承認。他にもビットコインは4月、新規発行量が半分になる4回目の半減期を迎え、相場の追い風になる材料が続いた。
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アルトコインでは7月に米SECがイーサリアムの現物ETFも承認。ビットコインとイーサリアムの現物ETFを承認する動きは米国以外でも広まりつつあり、他の銘柄の現物ETFの申請も進み始めた。
また、他にも今年は仮想通貨相場に大きな影響を与える材料があった。その1つが、米FRBが9月に開始した利下げ。一般的に利下げは、仮想通貨のようなリスク資産に追い風であるとされる。
今年のもう1つ大きな出来事は、仮想通貨に肯定的なドナルド・トランプ氏が11月の米大統領選で勝利したこと。1月に誕生するトランプ政権には仮想通貨規制の緩和が期待されており、大統領選前後の仮想通貨相場の上昇に、すでに大きな影響を与えている。
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また、トランプ氏の勝利に伴って、仮想通貨企業に厳しい執行措置を続けてきた米SECのゲーリー・ゲンスラー委員長が退任することが決定。トランプ氏は選挙戦で、大統領選に勝利した場合ゲンスラー氏を大統領就任初日に解任すると表明していた。
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2025年はトランプ氏が、自身の名を冠したミームコインを発行したり、他国に関税を課したりして仮想通貨相場は大きな影響を受けた。また、米州でビットコイン準備金創設に向けた動きがみられたことも大きな特徴だ。
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米国に関しては、ビットコイン準備金設立に向けた大統領令への署名、ステーブルコインを規制するジーニアス法の成立、401k退職金制度での仮想通貨投資解禁も重要なイベントだった。他にも、アルトコインの現物ETFのローンチが進んだことも注目を集めた。
2025年は国内でも大きな動きがあり、仮想通貨に金融商品取引法を適用する議論が進んでいる。2026年は、投資家らが長期に渡った要望してきた分離課税への移行が進むのか、どのように移行するのか引き続き注目だ。
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また、国内ではステーブルコインの発行や発行に向けた動きが活発化してきた。
国内外では他にも、2025年は仮想通貨取引所Bybitへのハッキングや仮想通貨財務企業の増加などの重要イベントがあった。
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