国内大手取引所bitbankのアナリスト長谷川氏が、今週の暗号資産(仮想通貨)ビットコインチャートを図解し、今後の展望を読み解く。
今週の週次レポート:
今週のビットコイン(BTC)対円相場は上下に振れつつも軟調な地合いとなり、6日正午時点では1200万円周辺で推移している。
週明けのBTC相場はバイナンスの不正流出問題を消化し1250万円を試したものの、トランプ政権による米中間選挙後の対イラン攻撃を警戒して失速。その後はジリ安基調が続き、1200万円近辺まで下落した。翌3日には同水準で下げ渋ると、米株先物が反動高を演じるなか、BTCも徐々に水準を戻し、1240万円周辺まで回復した。
しかし、米中間選挙の開票が始まると、想定以上に民主党が優勢な見通しとなり、AIやデータセンター建設規制懸念から米株先物が急落。BTCも連れ安となり、一時1200万円を割り込んだ。
尤も、民主党が大統領の拒否権を覆すのに必要な上下両院それぞれで2/3議席に届かない見通しとなると、リスクオフムードが急速に巻き戻し、相場は1250万円近辺まで反発した。また、民主党が選挙で圧勝したことで、トランプ政権の対イラン強硬策に議会から制約が掛かるとの観測から、原油価格が急落。加えて、トランプ氏本人も負けを認め、民主党との協調余地を示したことで、相場は1280万円にタッチした。
ところが、翌5日の米株式市場では、AI関連を筆頭にハイテク株が急落。直近のArmやクアルコムの決算後の株価反応が冴えなかったほか、クアルコムの業績見通しも嫌気された。さらに、SNS上では民主党議員からAI規制やASI(人工超知能)禁止を求める声が相次ぎ、AI・データセンター投資を巡る政治リスクも改めて意識されたことで、半導体やAIインフラ関連株を中心にポジション解消が加速した。BTCはこの米ハイテク株の急落に連れ安となり、1200万円まで再度下落した。
足元では辛うじて1200万円周辺を維持しているものの、戻りは鈍く、小動きとなっている。
来週のBTC相場は、引き続き米ハイテク株の動向に振られやすい展開を想定している。先週は、民主党優勢が相応に織り込まれていたことから、中間選挙がBTC相場に大きな悪影響を及ぼす可能性は限定的とみていた。ただ、実際には民主党が想定以上に議席を伸ばしたことで、AI・データセンターを巡る規制強化への警戒が急速に台頭し、米ハイテク株は想定以上に不安定な値動きとなった。
尤も、民主党はトランプ大統領の拒否権を覆すために必要な両院それぞれ3分の2の議席を確保しておらず、連邦レベルで大幅な規制強化が直ちに進む可能性は高くないとみている。このため、来週は中間選挙の結果そのものよりも、AIやデータセンターを巡って具体的な規制議論がどこまで広がるかに注目したい。追加的な悪材料が出なければ、今週急速に高まった政治リスクは徐々に材料として消化される可能性があろう。
また、AI関連企業の決算にも引き続き注目したい。今週のパランティアやAMD、Armなどの決算は総じてAI・データセンター需要の底堅さを示したものの、中間選挙を巡る政治リスクも重なり、ハイテク株の地合い改善にはつながらなかった。来週はコアウィーブやネビウス、アプライドマテリアルズなどAIインフラに関連する企業の決算が予定されており、需要の強さが改めて確認されるかが焦点となろう。巨額AI投資の採算性を短期間で見極めることは難しいだけに、足元では業界全体の需要が維持されていることを確認できるかが、ハイテク株の売りが落ち着く切っ掛けになるとみている。
マクロ面では、10日に10月の米消費者物価指数(CPI)、13日には同卸売物価指数(PPI)が発表される。12月の利上げは市場で相応に織り込まれている一方、先週も指摘の通り、その先の政策金利のパスについてはコンセンサスが固まり切っていない。このため、物価指標が上振れれば来年の追加利上げ観測が強まり、米金利上昇を通じてBTCの重石となる可能性がある。
一方、中間選挙の結果は中長期的にはインフレ面で支援材料となる可能性もある。民主党が上下両院を掌握したことで、議会がトランプ政権の対イラン強硬姿勢に一定の歯止めを掛けるとの見方が強まっており、実際に原油価格は選挙後に大きく下落している。今後、対イラン政策の軟化や中東情勢の沈静化を通じて原油価格の下落基調が定着すれば、エネルギー価格からのインフレ圧力が和らぎ、12月以降の利上げ観測にも影響が及ぶ可能性がある。ただ、外交・軍事政策を巡る不透明感は依然として強く、短期間でインフレ見通しが大きく変化する材料とはみていない。現時点では、原油安が持続した場合の中長期的な相場の支援材料として意識しておきたい。
テクニカル面では、BTCはこれまで相場を下支えしてきた100日移動平均線を割り込んでおり、地合いは悪化している。一方、今週は米ハイテク株や半導体株が大幅に下落した割に、BTCの下げ幅は相対的に限定され、1200万円周辺では一定の底堅さもみられる。尤も、短期的な方向感は依然として米ハイテク株に左右されており、同セクターの売りが出尽くさなければ、BTCも本格的なアク抜けには至りにくいとみている。このため、100日線を早期に回復できなければ、まずは200日移動平均線が位置する1160万円周辺、その下では心理的節目となる7万ドル(約1105万円)まで下値余地を意識しておきたい。