国内大手取引所bitbankのアナリスト長谷川氏が、今週の暗号資産(仮想通貨)ビットコインチャートを図解し、今後の展望を読み解く。
今週の週次レポート:
今週のビットコイン(BTC)対円相場は、底堅い推移の後、1275万円周辺から急落し、10月30日正午時点では1220万円台で推移している。
週明けのBTC円は、米ハイパースケーラー各社による巨額なAI投資の採算性を巡る懸念から上値を抑えられつつも、原油価格の下落に下値を支えられ、1260万円周辺での揉み合いとなった。この日の米国時間には、アンソロピックがIPO申請を米証券取引委員会(SEC)に提出したことで、米ハイテク株が反発したが、BTCは底堅く推移しつつも買いは続かず、1260万円周辺での揉み合いが続いた。
ただ、27日の米国時間には、原油価格の下落と米ハイテク株のリリーフラリーが支援となり、相場は1280万円近辺まで上昇。その後は米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え戻り売りが入り、1275万円まで押したが、同委員会ではサプライズもなく、イベント通過後は一時1290万円にタッチした。
一方、週後半からは、アルファベットの決算を契機に、米ハイパースケーラー各社によるAI投資の採算性に対する懸念が再燃。29日米国時間序盤には、米四半期PCEが前期比で減速したことで、一時は相場が切り返す場面もあったが、引け後のアマゾンの決算で設備投資額の増額とキャッシュフローの悪化が明かされると、BTCは米株先物の下落に連れ安となり1250万円を割り込んだ。
さらに、30日朝方にはバイナンスから60億ドルを超える額の暗号資産の不正流出が報じられ、相場は一時1200万円近辺まで下値を広げている。
来週のBTC相場は、材料やイベントが目白押しとなりつつも、米ハイテク株の動向に振られやすい展開を想定している。
まず目先では、バイナンスからの大規模な暗号資産流出を巡る動向に注意したい。尤も、流出した資産のうちステーブルコインの多くは発行体によってオンチェーン上で凍結されており、今回の事件がBTCの大局的なトレンドを左右する可能性は低いとみている。一方、世界最大手の暗号資産取引所に対する攻撃だけに、警戒感から同取引所からの出金が加速すれば、ポジション解消などを通じて短期的に暗号資産市場が不安定化する可能性には留意したい。
3日には米中間選挙が予定されている。現在は共和党が上下両院とホワイトハウスを押さえているが、議会構成が変化すればトランプ政権の政策推進力が低下し、暗号資産を巡る法整備にも影響が及ぶ可能性がある。ただ、ステーブルコイン規制を定めるジーニアス法は既に成立しており、クラリティ法案も9月の上院での採決失敗を受けて年内成立への期待は後退している。こうした状況は市場にも相応に織り込まれているとみられ、中間選挙の結果が暗号資産市場に大きな悪影響を及ぼす可能性は限定的とみている。
より相場への影響が大きいと考えられるのが、週前半から相次ぐ米AI・半導体関連企業の決算だ。今週はアルファベットやアマゾンの決算を受け、AI需要そのものよりも巨額投資の採算性に対する警戒感が強まり、ハイテク株の下落がBTCにも波及した。
来週はパランティア、AMD、スーパー・マイクロ・コンピューター、クアルコム、Armなどの決算が予定されており、GPUやデータセンターを巡る需要の持続性が改めて問われることになる。AI関連需要の底堅さが確認され、米ハイテク株が復調すればBTCにも買い戻しが入りやすくなる一方、懸念が一段と強まれば、BTCも下値を模索する展開が続く可能性がある。
また、来週は米雇用統計ウィークでもある。週半ばにはJOLTS求人件数やADP雇用統計、ISMの雇用指数などが相次ぎ、6日には10月雇用統計が発表される。12月の利上げについては市場も相応に織り込んでいる一方、その先の政策金利のパスについては依然として見方が定まっていない。雇用の底堅さが確認されれば来年の金利高止まり観測につながる一方、労働市場の減速が鮮明となれば、追加利上げへの警戒感が後退する可能性があろう。
こうした中、来週のBTCは米ハイテク株の地合いが短期的な方向感を左右するとみている。今週は8万ドル(約1261万円)を明確に割り込んだことで相場の地合いが悪化しており、AI投資を巡る懸念が払拭されなければ、200日移動平均線に向けて下値を探る展開も想定しておきたい。一方、AI関連企業の決算を契機にハイテク株が切り返せば、BTCにも反発の余地が出てこよう。