2026年11月5日、日経平均株価が1,110円下落しました。ところが、構成225銘柄のうち値上がりしたのは161銘柄。日本株全体の動きを示すTOPIXも1.16%上昇していました。
翌6日には状況が逆転します。日経平均は午前中に一時4,100円以上下落し、構成銘柄のほぼすべてが値下がり。間に挟まった米国市場ではS&P500が4.36%安、NASDAQ総合指数が5.52%安となり、ビットコイン(BTC)も7万5,000ドル台まで売られました。
さらに暗号資産市場では、わずか4時間で約1,400億円相当のレバレッジ取引のポジションが強制清算されています。
「世界同時安」とまとめられた相場ですが、最初からすべての銘柄が一緒に売られていたわけではありません。11月5日から6日にかけての数字を時間順に並べると、急落の中身が変わっていった様子が見えてきます。
日経1,100円安の裏で、161銘柄が値上がり
11月5日の日経平均は6万1,077円90銭で取引を終え、前日から1,110円73銭下落しました。それでも構成225銘柄の約72%が上昇し、下落は64銘柄だけでした。
数字を分解すると、さらに興味深いことが分かります。
日経平均の公式データ
では、技術セクターが指数を2,011円93銭押し下げた一方、残る6セクターは合計約901円の押し上げ。アドバンテスト1社だけで1,097円07銭、東京エレクトロンも460円15銭の押し下げ要因になりました。
この2社の下落寄与度の合計は1,557円22銭です。実際の日経平均の下落幅を上回っており、他の銘柄の上昇が下げ幅を抑えていたことになります。
日経平均は、225銘柄の株価を一定の係数で調整して平均する「株価平均型」の指数です。一方、TOPIXは企業の浮動株時価総額を反映して算出します。構成銘柄と計算方法が異なるため、同じ日本株でも値動きが食い違います。
実際、5日のTOPIXは3,940.39ポイント、前日比1.16%高でした。
この日の市場では、半導体・AI関連株への売りと、それ以外の多くの銘柄への買いが同時に起きていたのです。
米国株の急落より先に始まった半導体売り
ここには時差による見落としがあります。
11月5日の東京市場が開く前、米国の11月4日取引ではS&P500が1.58%、NASDAQ総合指数が1.44%上昇していました。米中間選挙の結果を受け、前日の米国株はむしろ大幅高だったのです。
それでも5日の東京市場では、AI向け半導体の検査装置を手掛けるアドバンテストが14%以上下落し、東京エレクトロンも9%以上下落しました。
米中間選挙で民主党が議会の主導権を握ったことを受け、データセンター建設に対する規制が強まれば、半導体や電力設備の需要に影響するという警戒が広がっていました。
その後、米国時間5日の株式市場で売りが本格化します。
NVIDIAは9%以上下落し、半導体株指数のSOXは12%以上安。S&P500は4.36%、NASDAQ総合指数は5.52%下がりました。米国のAI関連投資が今後も計画どおり進むのか、投資家の見方が慎重になったと報じられています。
東京市場の5日の1,100円安は、その夜の米国株4%安を受けた下落ではありません。日本で半導体関連株が先に大きく売られ、続く米国市場でもAI関連株を中心に売りが広がったという順番です。
翌朝、値下がりは64銘柄から221銘柄へ
11月6日の東京市場では、前日と景色が一変しました。
日経平均は午前9時25分ごろに5万6,971円まで下落し、前日終値からの下げ幅は一時4,106円90銭に達しました。
株探の前場集計 によると、構成225銘柄のうち221銘柄が値下がりし、値上がりはわずか3銘柄。東証プライム市場でも値下がりは1,515銘柄に及び、33業種すべてが下落しました。
5日は一部の半導体関連株が指数を大きく押し下げ、他の多くの銘柄は上昇していました。それが6日には、業種を問わずほぼ全面安となっています。
日経平均の下げ幅は1,100円から一時4,100円へ拡大しましたが、変わったのは金額だけではありません。売りが集中していた範囲そのものが大きく広がりました。
BTCでは、下落が新たな売りを生んだ
米国株が急落した11月5日、BTCも7万5,000ドル台まで下落し、報道時点の24時間騰落率は約マイナス5.8%になりました。
暗号資産市場で株式と大きく異なるのが、レバレッジ取引の強制清算です。
例えば10万円の証拠金で、50万円分のBTCの値上がりを見込む取引をすると、BTCが5%下落しただけで2万5,000円の評価損が生まれます。証拠金が取引所の定める水準を下回れば、本人が持ち続けたくてもポジションが強制的に決済されます。
買いポジションの清算では反対売買が発生し、それが市場の売り圧力を強めることがあります。
11月5日19時02分(UTC)に公開された CoinGlassの集計を引用した報道 では、直近24時間の清算額は約10億8,000万ドル。そのうち約9億5,400万ドルが買いポジションでした。さらに直近4時間だけで約8億9,600万ドル、日本円で約1,400億円相当のポジションが清算されています。
この清算額はBTCだけでなく、複数の商品を対象とした集計です。BTC単独では24時間で約2億8,100万ドルでした。また、清算されたポジションの規模を示す数字であり、その全額の現物BTCが売却されたわけではありません。
報道時点から逆算すると、清算が集中した4時間は米国東部時間のおおむね午前10時から午後2時に当たります。ニューヨーク株式市場が開いている時間帯です。
株式市場が閉まっているから24時間売買できるBTCが先に売られた、という説明では今回の動きを説明できません。米国株の取引が続くなかで暗号資産の買いポジションにも大量の清算が発生し、両市場で売りが強まっていたのです。
BTC現物ETFから5営業日で約2,390億円が流出
BTCの下落を米国株だけで説明しにくい材料もあります。
米国の現物BTC ETFでは、10月30日に6億4,320万ドル、11月2日に3億9,860万ドル、3日に1億1,560万ドルが純流出しました。4日は7,460万ドルの純流入に戻りましたが、5日は再び4億3,020万ドルの純流出です。
Farside Investorsの集計
を合計すると、10月30日から11月5日までの5営業日で約15億1,300万ドル、日本円で約2,390億円の純流出になります。
米国株が11月5日に急落する以前から、BTCの現物ETFでは資金の引き揚げが続いていました。
ETFの資金フローだけで、現物市場の売却量や価格下落の原因を確定することはできません。ただ、今回のBTC市場では事前のETF資金流出があり、そこへ米国株の急落と大量の強制清算が重なったことは確認できます。
1,100円安の日に「日本株100万円」はどうなったのか
11月5日の日本株を、仮に100万円の指数連動資産で比較してみます。指数の騰落率がそのまま反映される単純計算では、日経平均連動なら約1万7,900円のマイナス、TOPIX連動なら約1万1,600円のプラスです。同じ日本株を対象とした運用でも、わずか1日で約2万9,500円の差が生じました。
翌6日には、前日まで逆方向に動いていた両指数がそろって大きく下落する局面へ変わっています。前日の半導体株に集中した売りが、翌朝には広範囲の銘柄に及ぶ売りへ変わりました。
BTCでも、現物を保有する場合と先物でレバレッジをかける場合では、急落時に起きることが違います。現物なら値下がりしても保有を続けられますが、証拠金不足によって強制清算された買いポジションは、その時点で閉じられます。
今回の株式市場では、まず一部の大型株への売りが指数の下落を大きく見せ、その後、実際に市場全体へ売りが広がりました。暗号資産市場では、ETFの資金流出が先行し、米国株の急落と重なる時間帯にレバレッジ取引の清算が集中しました。
11月5日の東京市場、同日夜のニューヨーク市場、翌6日の東京市場。同じ方向に株価やBTC価格が下落したとしても、それぞれの売りが始まった時点と、下落を大きくした仕組みは異なっています。
世界同時安という結果に至るまで、売りは最初から世界中で同時に始まっていたわけではありません。日本の半導体株への集中売り、米国のAI関連株の急落、BTC市場の強制清算が、時間をずらしながら重なった48時間でした。
※本記事は2026年11月6日午前(日本時間)までの市場データを中心に、公開情報から作成しています。11月6日の日経平均の数値は取引時間中の参考値であり、終値ではありません。ドルの円換算は1ドル=約158円で概算しています。
※本記事は金融市場・暗号資産に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品や暗号資産の売買を推奨するものではありません。
参考文献・データ出典
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日本経済新聞社「日経平均プロフィル/日次サマリー」(2026年11月5日)
:日経平均終値、騰落銘柄数、セクター別・銘柄別寄与度
・
日本インタビュ新聞「日経平均1110円安の謎」(2026年11月5日)
:TOPIXの上昇率と指数の比較
・
フィスコ/株探「日経平均は大幅に5日続落」(2026年11月6日前場)
:前場の騰落銘柄数、日経平均の前引け
・
ロイター「Nasdaq posts biggest daily drop in 19 months on fears of AI regulations」(2026年11月5日)
:S&P500・NASDAQ・半導体株の下落と背景
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ロイター(ニューズウィーク日本版掲載)「日経平均が6%超急落」(2026年11月6日)
:6日朝の一時的な下落幅
・
crypto.news「Crypto crash wipes out $954M in longs as Bitcoin falls below $76K」(2026年11月5日)
:CoinGlassの暗号資産強制清算データを引用した報道
・
Farside Investors「Bitcoin ETF Flow (US$m)」
:米国現物BTC ETFの資金フロー(2026年10月30日〜11月5日)


