SBIホールディングスとスターテイル(Startale Group)は27日、ブラックロックと基本合意書を締結したと発表した。トークン化マネー・マーケット・ファンド(MMF)と円建てステーブルコイン「JPYSC」を活用したデジタル資産エコシステムの構築を目指す。
ブラックロック側で合意に加わったのは、BlackRock Financial Management(BFM)とブラックロック・ジャパンの2社。各社は技術・インフラ、事業・販売、規制・市場整備の3領域で、トークン化MMFとJPYSCの連携可能性を検討する。
MMFは、短期国債やコマーシャルペーパーなど満期の短い金融商品で運用する投資信託を指す。価格変動が小さく、現金に近い資金の置き場として使われてきた。これをブロックチェーン上で発行・流通させるのがトークン化MMFだ。リリースは、ステーブルコインと組み合わせた新たな金融インフラの構築が世界的に進んでいるとしている。
当のブラックロックは、この分野で先行してきた。2024年3月には米国債などで運用するトークン化ファンド「BUIDL」をパブリックチェーン上で立ち上げた。8月3日にはステーブルコインの準備資産としても使える新型のトークン化MMFを2種投入し、翌4日には 欧州などで既存のMMFをトークン化した持ち分の提供 を始めた。対象となる6本のMMFの運用資産残高は計3,110億ドルに上る。
国内では7月、三井住友信託銀行が英領ケイマン諸島籍のマネー・マーケット型ファンドの受益権を、パブリックチェーン上でトークン化する実証実験に乗り出した。同行によると、こうしたファンドのトークン化は北米を中心に広がり、市場規模は2024年3月末からの2年間で約4.5倍に拡大した。
ブラックロックはトークン化MMFに関するグローバルな知見とネットワークを持ち込む。SBI側は、SBIグローバルアセットマネジメントをはじめとするグループ各社の顧客基盤と規制対応のノウハウを提供する。オンチェーン金融の技術基盤を担うのはスターテイルだ。SBIホールディングスの持分法適用会社で、シンガポールに本社を置く。JPYSCもSBIグループと共同で開発した。
協業の枠組みは3社に閉じない。リリースによると、国内外の金融機関や事業者を含む幅広い市場参加者に開かれたもので、各社は多様なパートナーとの対話を通じて市場環境の整備を進める。
JPYSCは、SBI新生信託銀行が発行する円建てステーブルコインで、資金決済法上は電子決済手段に当たる。6月24日の提供開始時の発表では、信託銀行が裏付け資産を管理する信託型として国内初の発行とされた。9月には裏付け資産の一部で日本国債の運用も始めている。
リリースは、資金決済法の改正でステーブルコインの法的枠組みが整った一方、トークン化資産の普及やステーブルコインとの連携には、なお制度・実務面の課題が残ると指摘している。その一端はJPYSC自身にも表れている。現時点では利用がSBI VCトレードの口座内に限られ、外部ウォレットへは出庫できない。
SBIグループとスターテイルは6月の提供開始時、パブリックチェーン上での流通に向けた技術的・実務的な準備はすでに完了していると説明した。そのうえで、法令・税務上の取り扱いが整理され次第、監督当局の確認を前提に移行を目指す方針を示している。トークン化MMFとオンチェーンでつなぐうえでも、この移行の行方が焦点となる。
SBIホールディングスの北尾吉孝代表取締役会長兼社長は、リリースに寄せたコメントで「オンチェーン金融への移行はもはや避けられない時代の流れです」とコメントした。日本がこの潮流に乗り遅れず世界をリードするには、いち早い備えが欠かせないとし、ブラックロックとの提携を通じてグループの取り組みを一段と加速させる考えを示した。
スターテイルの渡辺創太CEOは、米国でSECを中心にトークン化・オンチェーン化に向けた規制改革が急速に進み、既存の金融資産がオンチェーン金融へ移り始めていると指摘した。この流れは不可逆で、日本も取り組みを加速させる必要があるとしたうえで、「JPYSCとトークン化MMFの接続は、オンチェーン金融の基盤となる重要なピースです」と位置づけた。
ブラックロック・ジャパンの橋本幸子代表取締役社長は、世界で培った知見を日本で生かし、国内の投資家に新たな価値を届けることが重要だとした。BFMのマネージング・ディレクター、ジョナサン・スティール氏は、今回の協業について、伝統的な金融と新たなデジタル資産エコシステムをつなぐインフラの構築という共通の目標を示すものだと説明している。
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