スイスのハードウェアウォレットメーカー「BitBox」は17日、社内監査で発見した深刻な脆弱性を修正する最新版のファームウェアを公開したと発表した。
公式ブログによると、今回のアップデート「Dixence」(バージョン9.26.5)では、新たに発見された2件の深刻な脆弱性を修正した。加えて、7月のOeschinenアップデート(9.26.2)で既に修正されていた脆弱性についても、その深刻度を改めてユーザーに周知した。
同社はすべてのユーザーに対して、最新版ファームウェアへの更新を強く推奨している。9.26.5以降のファームウェアを使用しているBitBoxデバイスは、本アップデートで説明された脆弱性の影響を受けないという。
これまでに脆弱性が悪用されたとの報告やユーザー資金が盗まれたとの報告はなく、既存のウォレットシード(リカバリーフレーズ)への影響もないと同社は説明している。
BitBoxによると、修正されたのは「メモリ破損」の脆弱性と、暗号資産(仮想通貨)の送受信機能「Silent Payments(サイレントペイメント)」の実装に関する脆弱性の2件だ。
1つ目の欠陥は、ウォレットが未設定のBitBox02およびBitBox02 Nova(いずれもMultiエディション)におけるメモリ破損の問題だ。まだウォレットをセットアップしていない状態で、悪意あるホスト端末と接続した場合、任意コードの実行や悪意あるファームウェアのインストールが可能で、最終的に保管されている資産を失う恐れがあったという。
一方、BitBox02のビットコイン保管に特化した製品は、今回問題となったコードが含まれていないため、影響を受けない。
2つ目の欠陥は、ビットコインのSilent Payments機能の実装に関する問題で、悪意あるホストがビットコインを意図しないアドレスにロックできてしまう可能性があった。BitBoxによると、直接的な盗難は不可能だが、攻撃者と受取人の協力が必要なため、身代金要求の材料に使われかねなかったという。
この件に関しても、これまでユーザーからの被害は報告されていない。
これら2つの欠陥は、Dixenceアップデートで修正済みだ。
BitBoxは今回、7月に公開したOeschinen アップデートで既に修正していたブートローダーの脆弱性についても、改めて詳細を説明した。
この脆弱性を悪用すると、攻撃者がユーザーをフィッシングなどで誘導した後、デバイスのロックを解除させ、正規のBitBox02に偽のファームウェアをインストールさせることで、資金を窃取することが可能だった。なお、BitBox02 Novaは影響を受けず、実害の報告もないという。
これら一連の脆弱性は、同社のエンジニアが最先端のAIモデルを活用して実施した徹底的な内部監査とテストを通して発見された。
BitBoxは、製品の安全性を保つためには、ユーザーが最新のファームウェアに更新するだけでよいと説明している。ただし、常に公式サイトへアクセスすることが重要だと強調し、セキュリティアップデートを装ったフィッシング詐欺に注意を呼びかけた。
ハードウェアウォレットの安全性を巡っては、7月30日から8月上旬にかけて、ビットコイン専用ウォレット「コールドカード(Coldcard)」でファームウェアの不具合に起因する大規模なビットコイン流出被害が発生した。
原因は2021年に導入されたファームウェアの不具合で、ウォレットのシード生成時にハードウェアの乱数生成器が適切に利用されず、予測可能性の高いソフトウェアベースの乱数生成処理が使われていた。その結果、端末を物理的に操作しなくても攻撃者が秘密鍵を推測できる状態となり、被害が拡大した。
ギャラクシー・リサーチが14日に発表した最新の集計によると、8,600超のウォレットから窃取されたビットコインは1,778.84BTC(約182億円)に上る。
