仮想通貨取引所BitMartは26日、取引プラットフォーム事業を段階的に終了すると発表した。8月26日に現物・先物を含む全ての取引サービスを停止し、来年の1月31日をもって運営を正式に終了する計画だ。
同社は終了の理由について、市場環境や事業運営の状況、今後の戦略を総合的に検討した結果だと説明している。発表日から新規ユーザー登録と仮想通貨・法定通貨の入金、現物・先物の新規注文受付を順次停止しており、先物口座は新規ポジションを開設できない「ポジション縮小のみ」モードへ移行した。コピートレードやグリッド、API取引も段階的に終了する。
8月26日には現物・先物の全取引に加え、BitMart Earnやステーキング、レンディング、Launchpadといったサービスも順次終了する。未決済の先物ポジションは、マーク価格や指数価格などに基づいて処理される可能性がある。
同社はユーザーに対し、8月26日1時(UTC)までに本人確認(KYC)の完了と全ポジションの決済を行い、同日5時(UTC)までに出金申請を済ませるよう強く推奨している。
出金サービスは当面継続されるが、本人確認や資金源の確認、トラベルルール対応、制裁リスト照合といったコンプライアンス審査が入る場合がある。大量の出金申請やブロックチェーンの混雑で処理が遅れる可能性もあるとして、重複申請は避けるよう呼びかけた。サービス終了後も一定期間は、アカウントへのログインや取引履歴の閲覧、所定の手続きに沿った出金申請を受け付けるとしている。
今回の発表は、BitMartが直近まで打ち出していた成長戦略から大きく転換する内容となった。同社は上半期レポートで資産運用事業の運用資産残高(AUM)が前期比約3.6倍に増加したと報告し、当時のグローバルCEOだったネンター・チャウ氏は、予測市場やトークン化資産、各国での規制対応を強化する方針を示していた。
6月にはオーストラリア金融サービスライセンス(AFSL)の取得を発表し、現地でコンプライアンスや法務体制を拡充する計画も明らかにしていた。方針転換に至った理由や経緯について今回の発表では説明されていない。
チャウ氏は26日、X(旧Twitter)への投稿で、今回の段階的な運営終了の意思決定には一切関与していなかったと説明した。同氏によると、7月24日にグローバルCEOとしての雇用契約終了を通知され、直ちに退任手続きが開始されたという。
それ以降は経営や運営上の意思決定に関与しておらず、今回の事業終了についても事前の説明や協議はなく、同社の公表によって初めて知ったと主張している。退任の確定日はまだ通知を受けていないとして、それ以上のコメントは控えた。
一連の経緯は、同社の情報開示とガバナンスのあり方に疑問を残す形となった。取引所の運営主体としての意思決定過程を外部から検証できない状態にある。
コンプライアンス体制についても不透明さが残る。同社は出金審査でトラベルルール対応や制裁リスト照合を実施すると説明する一方、ユーザー資産の裏付けを示す準備金証明は公開に至っていない。顧客資産の分別管理や監査の状況を外部から確認する手段が乏しく、閉鎖手続きの最終期限を2027年1月31日と長期に設定した点についても、根拠となる説明はない。
BitMartは2017年に設立され、2018年のサービス開始以降、現物・デリバティブ取引を中心に事業を拡大してきた。アルトコインを幅広く取り扱うグローバル取引所として成長し、同社によると世界180以上の国・地域で1,300万人を超えるユーザーにサービスを提供してきたという。2021年12月には約1億9,600万ドル相当の仮想通貨が流出するハッキング被害を受けたが、ユーザーへの補償を実施して事業を継続していた。
一方で、資産の裏付けを巡る指摘も続いていた。同社は5月23日、「出金できない」とのSNS上の指摘を受けて声明を公表し、出来高の水増し取引でキャンペーン報酬を不正に取得していた239の関連アカウントを検知・制限したためだと説明。正当な利用者への影響はなく、サービスは通常どおり稼働していると強調していた。
ユーザー資産の透明性を示す準備金証明(PoR)についても、セキュリティやリスク管理上の検討が完了した段階で公開する方針を示していたが、運営終了の発表時点で完全版のレポートは同社サイト上で確認できない。SNSやオンチェーン分析のコミュニティでは、ウォレットの資金移動を巡る憶測も広がっている。ただし取引所によるウォレットの再編やコールドウォレットへの資金移動は平時にも行われるため、資金の動きだけで経営状況を判断することはできない。
BitMartは新規上場銘柄や中小型アルトコインの取り扱いが多く、同取引所に流動性が偏る銘柄では影響が出やすいとの見方もある。
