ブロックチェーン調査企業Delphi Digitalは21日、に発表したレポート「胴元(ハウス)は常に勝つ:なぜ投機がこの10年のテーマなのか」をに発表した。レポートは、投機の対象となる資産そのものではなく、投機を支える取引プラットフォームや決済インフラに注目するべきだと主張している。
Delphi Digitalは、過去の投機ブームを動かした要因を「建設型」と「宝くじ型」の2つに分ける。建設型は、技術革新が新たな成長市場を生むという期待から起きる投機で、鉄道やドットコムバブルが当てはまる。
「宝くじ型」は、働いて貯めるだけでは暮らしが良くならないという不安から、少額で大きな利益を狙う行動だ。1720年の南海泡沫事件や2000年代の住宅ブームがこれにあたる。
従来は、この2つの「エンジン」が別々に働いていた。現在は両方が同時に加速しているというのがレポートの見立てだ。AIなど技術革新への期待と、生活費や住宅価格をめぐる経済的な不安が併存しているためである。
AIは両方のエンジンを同時に加速させる要因の一つだ。巨大テック企業は数千億ドル規模を投じ、計算能力、電力、データセンターの整備を急いでおり、技術投資のブームが起きている。
一方でAIはエネルギーコストを押し上げ、財政や資金調達への圧力を強め、若者の雇用見通しも悪化させているとの指摘がある。そのため、人々がリスクは高くても見返りの大きい機会を求めやすくなるという。
取引に参加するための技術的・制度的なハードルが下がったことも、投機需要を広げている。
かつては企業への投資とスポーツ賭博は全く別のものだった。今では株価指数オプション、予測市場、スポーツ賭博、仮想通貨取引のすべてをスマートフォン一台で扱える。
金融商品も需要に合わせて変わった。シカゴ・オプション取引所(Cboe)は2022年、S&P 500指数オプションにおける満期日を増やした。これを受けて「0DTE(当日に満期を迎える超短期オプション)」の取引が急増し、SPXオプション全体に占める割合は2025年に59%、2026年7月には過去最高の66%となった。
予測市場(イベント契約)も急成長している。代表的なプラットフォームであるカルシ(Kalshi)とポリマーケット(Polymarket)の合計取引高は、2026年7月に530億ドルと前年同月の約25倍に膨らんだ。
取引アプリの使い勝手も進化した。仮想通貨取引アプリ「Fomo」には、他ユーザーの売買状況や損益をリアルタイムで追い、同じ画面から取引できる機能がある。同アプリの無期限先物取引は、オンチェーン最大級のDEXハイパーリキッド(Hyperliquid)を活用しており、高度なソーシャル取引機能がオンチェーンのインフラ上ですでに動いている。
Fomoによると、ユーザー数は2026年6月までに60万人、累計取引量は40億ドルを超えた。
レポートによれば、AIが投機の「動機」を作るのに対し、仮想通貨は「インフラ」を提供し、新たな市場参加者を育成している。
ソラナ上の「pump.fun」では2ドル未満の費用で、わずか数秒でトークンを作れる。2024年以降の作成数は1,900万を超え、9月下旬には1日約3.3万種が誕生した。ハイパーリキッドでは、一定量のHYPEをステークすれば、株式、商品、外国為替の無期限先物も即座に上場できる。
実際、仮想通貨取引所における非仮想通貨デリバティブの月間取引量は、2026年1月の520億ドルから6月には2,680億ドルへと急増した。仮想通貨市場全体の時価総額が縮小するなかでもデリバティブの取引量は伸びており、市場の需要は個々の銘柄から「さまざまな資産に賭けられる取引インフラそのもの」にも向かっている。
伝統的金融側も、仮想通貨取引所が先に提供してきた仕組みに近づいている。
米先物取引大手CMEは仮想通貨デリバティブの24時間取引を始めた。米商品先物取引委員会(CFTC)はカルシのビットコイン無期限先物を承認し、対象は金・銀や株価指数にも広がっている。このほか米証券決済機関DTCCの平日24時間決済、12月開始予定のナスダックの夜間取引、米証券取引委員会(SEC)によるパブリックチェーン上のトークン化株式取引へ向けた対応など、伝統市場全体で24時間365日の取引と高速決済化が進んでいる。
取引のハードルがここまで下がったことで、新たな投機参加者が市場に流れ込んでいる。
CFA協会などの調査では、米Z世代投資家の44%が「最初の投資対象」に仮想通貨を選んだ。エアドロップやトークン価格の上昇で得た利益を、そのまま再投資へ回すケースも多いという。
Delphi Digitalがレポートで強調するのは、投機の対象ではなく、投機を支える市場インフラの重要性だ。
AI関連株、ミームコイン、金、スポーツ、金利と、投機の対象は次々に入れ替わる。特定の銘柄やテーマに投資するなら、どれが勝者になるかを見極めなければならない。
これに対し、取引所や証券会社などの市場運営者は、取引手数料や注文フローに関する収益などを通じて、利用者の売買そのものから稼ぐ。取引対象が替わっても、利用者を継続的に集め、競争力のある収益構造を維持できれば、個々の銘柄の成否に左右されにくい事業を築ける可能性がある。
レポートは、この違いをカジノに例える。カジノの事業は、個々の客が勝つか負けるかではなく、客が集まり、賭けが続き、運営側が収益を得られる仕組みで成り立つ。取引所も同様に、利用者の見方が分かれて売買が発生し、競争に耐える手数料率を確保できるかが重要になる。
ただし、取引高が増えても利益が増えるとは限らない。競争による手数料の低下、利用者の獲得費用、流動性を確保するための支出が収益を圧迫することもある。予測市場やデリバティブには、国ごとの規制や商品設計に応じた法的リスクもある。
こうした点を踏まえ、レポートは市場インフラへの投資を検討する際の5つのルールを挙げている。