米資産運用大手グレースケールは26日、財務省による米国債買い戻しの拡大について分析したレポートを公開した。同社は、買い戻しが金利上昇という症状への対応にとどまり、構造的な財政赤字という根本原因の解決にはならないと論じた。
財務省は19日、長期債の買い戻し規模を1回あたり20億ドルから40億ドルへ倍増させると発表した。同日、米国の公的債務が初めて40兆ドルを超えたことも明らかになった。
同債務は世界金融危機以降ほぼ一貫して増加してきたが、当初は住宅バブル崩壊で民間部門が借り入れを抑えていたため、金利への影響は限定的だった。
一方で、グレースケールは、人工知能(AI)関連投資を背景に民間の資金需要が拡大している現在は、政府と民間という二つの大口借り手が同時に資金需要を拡大させることで金利が押し上げられていると分析した。
グレースケールは、政府債務の際限ない増加が法定通貨への信認を損ない、投資家に金(ゴールド)や一部の仮想通貨といった発行上限のある代替的な価値保存手段を求めさせると分析した。同社はこうした「デベースメント・トレード」(通貨価値の低下を見込んだ資金逃避)の主な恩恵先として、ビットコイン( BTC )、イーサリアム( ETH )、プライバシー機能を持つジーキャッシュ(ZEC)の3銘柄を挙げた。
今回の増額分は9月9日から11月4日までの入札で適用される見通しで、通常の借換計画への上乗せ規模は140億ドル程度にとどまる。市場関係者の間では、40兆ドル規模の債務残高と比べて上乗せ分は限定的とみられる。
資産配分の妥当性を巡っても異論が出ている。市場関係者の一部は、グレースケールが25日にジーキャッシュ・トラストを現物ETF「ZCSH」として上場させたばかりであることを踏まえ、同社によるジーキャッシュの組み入れが自社商品の後押しを意識したものである可能性があるとしている。
また、一部のアナリストは、法定通貨への信認低下に備える手段としては金(ゴールド)の実績がより長く、仮想通貨が自動的に優位になるわけではないと分析している。また、政府と民間の借り入れ増加で実質金利が上昇する局面では、仮想通貨を含むリスク資産全般が下落しやすいとの見方も示された。
財務省は次回の定例入札発表を11月4日に控えており、買い戻し規模を改めて見直す方針を示している。